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SARTおよびレーダー捜索システムの国際的導入と標準化を達成する事ができた。
IMOの1974年の「海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS条約)の1988年改正では、第?章「救命設備」で「生存艇用SART」(救命いかだ、救命艇用)を、第?章「電気通信」では「本船用SART」のとう載を規定している。この改正SOLAS条約により、全世界の国際航海に従事する旅客船と300トン以上の貨物船約4.5万隻に対して、平成4年2月1日から平成7年2月1日までの間に最少約7.5万台のSARTの装備が行われることが決定している。また多くの主管庁において、大型船に比べて遭難件数が多く肉眼捜索による発見が難しい小型船へのSARTのとう載が計画されている。
今後の世界における海難発生時において、遭難通報のための送信機能だけを持つ現行EPIRBでは得られないSARTの持つ「双方向性」の機能は、夜間や濃霧時でも制約されないレーダーの性能をフルに活かした遭難者のロケーティングによる「救助率」の向上、捜索費用の低減と共に、モニターの接近通報による遭難者励ましの心理効果も併せて、生きて助かる「生存率」の向上にも大きく寄与するものと期待されている。
1.3.6 代表的なSART装置の概要
GMDSSの導入のための「1974年SOLAS条約の1988年改訂」では、第3章で救命いかだや救命艇に装備する「生存艇SART」を、第4章で本船の座礁時などに使用する「本船用SART」の積み付けを規定しており、後者は生存艇SARTで兼用して良い事になっている。また海面に浮遊させて使用するSOSブイ形式の「浮標型SART」もあるが、以下に現存する代表的な生存艇用SARTの概要を紹介する。
(1) 共通事項
a. 収納容器積付保管状態におけるSART装置本体の機械的損傷などから保護するために、何れの装置に対しても据付器兼用の「収納容器」が準備されている。この容器は、船外に暴露して据え付けを行った場合において魔法ビン的な性格を持ち、日光の直射による温度上昇を防いで電池の保存寿命を伸ばす働きも行うものである。
一般的に稀にしか使用することの無い救命用無線設備の場合、故障の大半は積付期間における苛酷な環境状態や人間のミスによる機械的損傷に起因するので、この収納

 

 

 

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